製作の考え方

家具を製作する上での考え方や技法などについてご説明します

家具のデザインについて
木工房シンプルという屋号の通り、シンプルなデザインを基本としています
家具に対する思いは人によってそれぞれでしょうが、木工房シンプルでは家具は第一には実用品であると考えています
実用品であるからには使いやすく機能的であることが第一であり、デザインにおいては機能を突き詰めた先に見えてくる「機能美」というものをその理想と考えています
決して装飾的な意匠を否定するものではありませんが、華美なデザインではなく、シンプルな中に機能的な美が見えてくるもの、でもちょっと遊び心が感じられるもの、そのような家具を作っていきたいと思っています

材料について
本物の木を、無垢材を用いて製作します
今まで、木が嫌いという人に出会ったことがありません
子供の頃に木登りをしたり、図画工作で木をのこぎりで切って本立などを作ったりして木と触れ合った方も多いことでしょう

古い旅館などに行くと、床や手すりなどが磨かれて美しい輝きを放っている光景を見ることがあります
そうです、本物の無垢の木は使い込むことによって色艶を増し、その美しさを増していくのです
傷も付きますが、しかしそれらも時間とともに味わいへと変わり、暮らしの歴史を表す象徴ともなります

先日、10年ほど前に学習机を納めた先のお客様と久しぶりにお会いする機会があり、お子様が今年受験するとのこと、、
机は小学生からずっと使っていて、大学に入ったら机も一緒に持っていくとの話を聞きました
それは紛れもなく学習机がお子様とともにあり、これからも一緒に成長する相棒になってくれているということでもあります
本物の木を使って、子供に媚びないシンプルでベーシックなデザインで仕上げた学習机だからこそ、年月を経てずっとご愛用いただけるものになったのだと嬉しく思っているしだいです

工法について
ほぞ組など、家具の伝統工法を用いて製作します
木は温湿度によって伸縮を繰り返し、それは家具になってからもずっと続きます
特に四季の変化が大きな日本にあってはこの伸縮が少なからずありますので、それらをうまく吸収しつつ強度を保持するための様々な工法が古来より工夫され、用いられてきました
そうなのです、伝統工法を用いるのは単なる懐古趣味ではなく、家具を長く使い続けるための必要不可欠なことであるのです
一方、木工技術も進歩し、現代ならではの合理的な工法もどんどん登場しています
木工房シンプルではこれら現代工法も積極的に取り入れ、常に合理化と低コスト化を追求しています

仕上げについて
表面は鉋で仕上げたあと均等にサンドペーパーで研磨し、塗料を重ね塗りして仕上げます
日本の鉋は取り扱いも難しいですが、きちんと調整した鉋の切れ味と作業性は素晴らしく、紛れもなく世界最高峰の木工手道具であると思います
手道具を用い、手で仕上げる、手作りによって木の美しさを最大限引き出すよう心がけ、日々製作しています

塗料は家具用のオイルを用いています
一般的にはオイル仕上げやオイルフィニッシュと呼ばれる技法で、木の自然な風合いが際立つ美しい仕上がりとなります
オイルは木の表面から内部に浸透し、硬化して木を内部より保護します
表面に厚い塗膜を作りませんので、木の手触りや風合いを損ねることがありません
触れば木肌の手触りが心地よく、使い込むほどに手の脂などが浸透して更に艶を増していきます
そう、まるで旅館の磨かれた床のように、使い込むことで家具もより美しく成長していくのです

以前はオイルの防汚性や防水性は決して高いとは言えず、取り扱いにも気を使いましたが、最近ではオイルの性能も飛躍的に上がっていますので、それほど気兼ねをすることなくお使いいただけます
ただ、材によってはオイルが馴染まなかったり、また、水回りなどで高い防水性を必要とされるものもありますので、より強力なウレタン仕上げなども適宜用いています
仕上げは家具の品位を決める大きな要因になりますので、その家具に最も適した仕上げを常に選択するようにいたします